矯正治療についてOrthodontic Treatment
矯正治療は、あごの成長が旺盛な小学生から開始されるのが理想的です。なぜならば、あごの成長・発育を育成することができ、すべての永久歯を無理なく並べることができるからです。
しかし、あごの成長がない中学生以上の方でも、当院ではできる限り歯を抜かない矯正治療(非抜歯矯正治療)を提案しております。
また、成人の方でも、歯や歯周組織に問題がなければ、どの年齢の方でも矯正治療は可能です。
ただし、矯正治療には患者さまのご協力と、ある程度の治療期間が必要であることから、矯正治療に積極的に参加していただきやすい時期に受けていただくのが最良です。
小学生以下の患者さまの矯正治療
小学生以下の患者さまの矯正治療については、次のように2段階に分けて行っております。
第1期矯正治療 【混合歯列期】
あごの成長・発育を育成し、歯並びだけでなく骨格の不調和を改善します。また、舌や咀嚼筋(食べ物をかみ砕く時に下あごを動かす筋肉)などの口腔周囲筋の機能を高めます。
あごを拡げる装置や奥歯を動かす装置、骨格の成長を改善する装置を用います。
すべての永久歯がはえそろうようにし、歯を抜かない矯正治療を可能にするには、大変重要な治療です。
あごの成長を育成する治療期間は、2~3年程度です。
第2期矯正治療 【永久歯列期】
すべての歯が永久歯に生えかわる小学校高学年から、第2期矯正治療に移行します。
セラミックブラケットとワイヤーを用いて、すべての歯をきれいに並べ、美しい歯並びにするだけでなく、機能的に良くかめるかみ合わせにします。
歯を動かす治療期間は、1年半~2年程度です。
この年代で矯正治療をお考えの方へ
骨格の不調和を改善し、すべての永久歯が生えそろうようにし、歯を抜かずに歯並び、かみ合わせを整えるためには、あごの成長・発育が旺盛な「混合歯列前期」に矯正治療を開始されるのが良いと考えております。
目安として、上下の前歯が永久歯に生えかわる時期、小学2〜3年生頃が最適です。
小学4〜5年生頃になると、犬歯や小臼歯が生えかわる「混合歯列後期」となり、あごの成長量は徐々に減少していきます。この時期の患者さまには、残っているあごの成長を最大限に活用し、歯を抜かない矯正治療を行うため、できるだけ早く矯正治療に参加していただくことをお勧めしております。
なお、骨格の不調和の大きな下顎前突(受け口)や、不良習癖の程度が大きい開咬の患者さまでは、まだ永久歯の前歯が生えそろわない時期から、開始するのが良い場合もあります。
中学生・高校生の患者さまの矯正治療
この時期では永久歯列期となりあごの成長がほとんどなくなりますが、まだあごが柔軟ですので、あごを拡げる装置や奥歯を動かす装置を用い、治療技術を工夫して、できる限り歯を抜かない矯正治療を目指します。
歯のガタガタの程度が大きい場合や、上下のあごのズレが大きい場合は、やむをえず歯を抜いて治療する場合もあります。
いずれの治療の場合でも歯を並べるために、セラミックブラケットとワイヤーを用います。
歯を動かす治療期間は2~3年程度です。
この年代で矯正治療をお考え方のへ
小学6年生頃には、永久歯にすべて生えかわる「永久歯列期」となり、あごの成長・発育が衰え、骨格の不調和の改善やあごの成長を育成することが困難になってきます。
しかし、当院では様々な矯正装置を用い、治療技術を工夫して、できる限り歯を抜かない矯正治療を実践しております。
成人の患者さまの矯正治療
当院では成人の方でも、できる限り歯を抜かない矯正治療を提案しております。しかしながら、あごの成長が止まっている成人の方は、歯が動く範囲にも制約があることから、状況によっては歯を抜かなければならない場合も、往々にして出てきます。
また、かぶせを入れた歯や歯周組織に問題がある場合は、歯や歯周組織への影響を考慮し、細心の注意を払って、歯を動かしていきます。
主にセラミックブラケットとワイヤーを用いて歯を並べます。
歯を動かす治療期間は2〜3年程度です。
この年代で矯正治療をお考え方のへ
年齢が高くなるほど、一般的には歯が動きにくくなります。しかし、歯や歯周組織に問題がなければ、どの年齢の方でも矯正治療は可能です。当院では、成人の患者さまも多く、60歳代の女性も矯正治療に参加していただいております。
その他の矯正治療
埋伏歯の開窓・牽引
骨の中に埋まっている歯を引っ張り出す矯正治療です。
まず、口腔外科の専門医にご紹介し、埋まっている歯の一部が見えるようにしていただきます。
歯の露出した部分に小さな金具を装着し、ゴムのような装置やクレーンのような装置を用いて、歯を歯列上に動かしてきます。
歯が埋まっている位置や年齢によっては治療が困難な場合もありますが、当院ではこれまで非常に難しい症例も多数成功させております。
部分的矯正治療
主に、後ろや横に倒れている1本から数本の歯を起こしたり、部分的に不正な歯並びを改善する矯正治療です。
倒れている歯を起こす固定装置や、歯列の一部に装着する金具、短いワイヤーを用いて治療します。補綴治療前処置として、また歯周治療に付随する治療として行うことが多いです。
大学病院との連携治療
唇顎口蓋裂などの先天性疾患の方の矯正治療(育成・厚生医療)
あごの成長の育成、顎裂部の歯の誘導、歯並び、かみ合わせの改善を行います。
大阪大学歯学部附属病院口腔外科、顎口腔機能治療部と連携をとって矯正治療を行っていきます。
外科的矯正治療
骨格性の不正が著しく矯正治療のみでは改善が困難な症例や、顔貌の改善が必要な方では外科的処置を併用した矯正治療を行います。外科的処置については、大阪大学歯学部附属病院口腔外科と連携をとります。
一般歯科治療、専門的歯科治療について
当院は矯正歯科専門医院ですので、むし歯などの一般歯科治療を行っておりません。矯正治療中に一般歯科治療が必要となった場合、ご紹介元歯科医院(かかりつけ歯科医院)または患者さまお住まいの地域の歯科医院をご紹介し、連携をとってまいります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。